【基準地価分析】都心の地価と不動産投資、今後の展望

【基準地価分析】都心の地価と不動産投資、今後の展望

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2020年9月29日に国土交通省が公表した「令和2年都道府県地価調査」(2020年7月1日時点の基準地価)によると全国の全用途で地価が下落に転じました。前年比で下落に転じたのは2017年以来で新型コロナウイルス感染拡大が大きな影響を及ぼしているといえるでしょう。東京都に限れば全用途平均で前年比0.6%上昇し8年連続の上昇となりました。

しかし前年の上昇幅が4.1%だったことと比較すると上昇幅が大幅に縮小していることが分かります。安倍政権においては、アベノミクス・インバウンド需要・東京オリンピックの開催などによって地価は上昇基調でしたが新型コロナウイルス感染拡大の影響で訪日外国人需要が雲散霧消したことにより今後の先行きは不透明な情勢です。

この記事では、新型コロナウイルスの影響を織り込んだ最初の大規模地価調査「2020年度基準地価の動向」を検証・分析し都心5区を中心とした不動産投資について考察していきます。

基準地価とは何か?

不動産投資

(画像=naka/stock.adobe.com)

基準地価は、各都道府県が調査した「土地の適正価格」で各都道府県内から選ばれた全国2万ヵ所以上の地点における1平方メートルあたりの価格を表したものです。各地点の評価は、毎年7月1日時点で各都道府県が算定し同年9月下旬に国交省がとりまとめたうえで公表されます。今回紹介する東京都の基準地価は、都内 1,278 地点の価格です。内訳は以下のようになっています。

  • 住宅地:772地点
  • 商業地:475地点
  • 工業地:14地点
  • 宅地見込地:6地点
  • 林地:11地点

公示地価・路線価との違い

基準地価と同じ土地価格の指標として「公示地価」や「路線価」があります。これらは、評価期間や評価方法・対象、公表時期が異なっていますが、いずれも公的機関から公表されるものです。そのため土地価格の現状を把握するのに適したデータといえます。

・公示地価
公示地価は、国が調査した「都市の土地価格の目安」で「都市計画区域内の土地」の1平方メートルあたりの価格を表したものです。毎年1月1日時点の土地の価格を国土交通省土地鑑定委員会が評価を行い、3月下旬に公表されます。

・路線価
路線価は、国税庁や市町村が算定する「税金算出の元となる土地の価格」です。路線(道路)に面する1平方メートルあたりの価格を表します。宅地に課税される相続税や贈与税などを算出する際には、路線価の価格が使用されます。

2020年東京都の基準地価の検証・分析

東京都全域の基準地価は、住宅地・商業地・工業地では8年連続で前年比プラスとなりましたが「上昇幅が縮小する」という結果になりました。上昇・下落・横ばいの地点数を2019年度調査と比較すると特に下落地点数の増加幅が大きくなっています。それぞれの数字は以下の通りです。

東京都基準地価の上昇・下落・横ばい地点数比較(2019年度・2020年度)

2019年度 2020年度 前年比
上昇地点数 1,019 704 ▲30.9%
下落地点数 53 379 +615.1%
横ばい 164 178 +8.5%

出典:東京都財務局「令和元年東京都基準地価格の概要」

都心5区の動向

ここからは、都心5区の動向について前年度調査との比較、用途別の比較としながら考察していきます。都心5区全体で見ると2020年度調査における地価の上昇は1.8%で2019年度の8.2%から大きく下落する結果となりました。なかでも千代田区と中央区の下落幅の大きさが顕著です(下表参照)。

都心5区の地価上昇率(2019・2020年度)

区名 2019年度調査 2020年度調査 前年比
千代田区 7.1 0.8 ▲88.7%
中央区 9.1 0.6 ▲93.4%
港区 9.0 3.1 ▲65.5%
新宿区 7.9 1.7 ▲78.4%
渋谷区 7.8 2.5 ▲67.9%
8.2 1.8 ▲78%

出典:東京都財務局「令和元年東京都基準地価格の概要」

・商業地
都心5区の商業地は、前年の9.1%から1.7%と価格上昇のペースが急減速しました。特に中央区銀座の下落率は23区内で1位・2位となったほか、トップ10はすべて都心5区内の地点となっています。

都心5区商業地の地価上昇率(2019・2020年度)

区名 2019年度調査 2020年度調査 前年比
千代田区 7.9 0.7 ▲91.1%
中央区 9.7 0.5 ▲94.8%
港区 9.9 3.5 ▲64.6%
新宿区 8.6 1.3 ▲84.9%
渋谷区 9.6 2.7 ▲71.9%
9.1 1.7 ▲81.3%

出典:東京都財務局「令和元年東京都基準地価格の概要」

一方、苦戦する5区の商業地の中で比較的下落幅が小さかったのが港区です。港区では、2020年3月にJRの「高輪ゲートウェイ」駅、同年6月に東京メトロ「虎ノ門ヒルズ」駅が開業。それに伴い駅周辺で複数の大型再開発が実施され人の流れが変わったことなども影響しているでしょう。なお都心5区ではありませんが、台東区浅草などの観光地は軒並みランキング上位からは外れています。

外出自粛要請や外国人の入国規制による訪日観光客の消失も影響している可能性が高いでしょう。

・住宅地
都心5区の住宅地の上昇率は2.1%となり、2019年度調査の5.2%と比較すると上昇幅は小さくなっています(下表参照)。そもそも都心5区の住宅価格は高止まりしていることに加えて商業地同様に新型コロナウイルスの影響を少なからず受けたことでこのような結果となったといえるでしょう。一方で新宿区の2.6%の上昇は荒川区と並んで23区内でも最も高い上昇率です。

住宅地の下落率トップ10に都心5区が含まれていないことは注目すべきポイントと言えます。なぜなら下落率トップ10を見てみると大田区田園調布5丁目や世田谷区尾山台1丁目などの戸建ての住宅街が散見されるからです。いずれも閑静な住宅街ではあるものの「駅から遠い」「商業施設が少ない」などの利便性に劣る部分があり下落しているという見方もできるでしょう。

都心5区住宅地の地価上昇率(2019・2020年度)

区名 2019年度調査 2020年度調査 前年比
千代田区 1.9 1.8 ▲5.3%
中央区 4.3 1.4 ▲67.4%
港区 6.0 2.0 ▲66.7%
新宿区 6.1 2.6 ▲57.3%
渋谷区 5.3 2.1 ▲60.4%
5.2 2.1 ▲59.6%

出典:東京都財務局「令和元年東京都基準地価格の概要」

コロナ禍だからこそより一層「都心」ブランドの価値を再確認できる

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い2020年7月1日時点の基準地価では全国的に地価が下落に転じています。ここまでの内容をおさらいして見ましょう。

  • 全国的に地価が下落傾向にある中、東京とりわけ都心5区においては地価上昇を維持している
  • しかし、2019年度に比べると上昇幅は縮小しており、新型コロナウイルス感染拡大の影響が垣間みられる
  • 都心5区においては、インバウンド需要消失による商業地への影響が顕著となっている
  • 住宅地の上昇幅は縮小しているが商業地よりも縮小幅は小さい
  • 区部でも利便性に劣るエリアの価格は下落する傾向にある

都心の不動産投資においては、新型コロナウイルス感染拡大やワクチンの開発によるコロナ禍の収束もさることながら「生活者の住まい方・暮らし方が今後どのように変化していくか」を注視していくことが必要です。コロナ禍を避けるためのテレワークや地方移住、巣ごもり消費の拡大など新しいトレンドが生まれました。

東京23区内であっても利便性に劣る立地であれば競争力を失い需要減による地価下落も避けられなくなっていく可能性もあるでしょう。一方で新型コロナウイルスのリスクがあっても都心の利便性を享受したいニーズが基準地価の下落幅を小さくさせた要因の一つとして挙げることができます。当面は、先行き不透明な情勢が続くことが予測されるでしょう。

そういった状況下だからこそ価値が下がりにくい「都心」ブランドの価値がより一層高まっていく可能性があるのではないでしょうか。(提供:THE Roots

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