自己破産後の年金はどうなる?財産は持てない?財産破産手続きのメリット・デメリット

自己破産後の年金はどうなる?財産は持てない?財産破産手続きのメリット・デメリット

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澤田 朗
澤田 朗(さわだ・あきら)
日本相続士協会理事・相続士・AFP。1971年生まれ、東京都出身。日本相続士協会理事・相続士・AFP。相続対策のための生命保険コンサルティングや相続財産としての土地評価のための現況調査・測量等を通じて、クライアントの遺産分割対策・税対策等のアドバイスを専門家とチームを組んで行う。設計事務所勤務の経験を活かし土地評価のための図面作成も手掛ける。個人・法人顧客のコンサルティングを行うほか、セミナー講師・執筆等も行う実務家FPとして活動中。

自己破産は、債務の返済が不可能になった場合に申し立てする手続きだ。気になるのが、手続き後の不利益だろう。将来の財産管理や公的年金の受給に影響するのだろうか。今回は自己破産のメリット・デメリットと合わせて、自己破産後の制限をまとめてみた。

自己破産とは?

財産破産手続き

(画像=beeboys/stock.adobe.com)

自己破産とは、債務を返済できない場合に行う手続きであり、裁判所が管轄している。目的は、債務を清算することで破綻した生活を立て直すことだ。

所有財産を換金することで債権者に分配・清算する。自己破産後の返済をまぬがれるには、破産手続きとは別に免責許可の申し立てを行う。

自己破産に関する専門家

手続きは弁護士や司法書士に依頼できる。弁護士は申立人の代理人となって破産手続きを行い、裁判所への同行や提出書類の作成などを任せられる。

また、弁護士が受任通知を発送することで、債務の取立行為を中止できる。受任通知とは、債務者から破産手続きの依頼を受けた旨を通知する書面だ。債権者への書類発送を弁護士が行い、申立人が債権者に直接対応しなくて済む。

一方、司法書士は代理人として破産手続きを行うことはできないが、裁判所に提出する書類や債権者に発送する書面の作成などを依頼できる。

申立人だけで手続きすることも可能で、必ずしも弁護士や司法書士に依頼しなくてよい。しかし、申し立てにはさまざまな書類の提出が必要となり、弁護士や司法書士に依頼したほうが賢明だといえる。

財産調査の対象

破産手続きの申し立てには、財産の所在や額などの詳細を調査する必要があり、原則として管財人が選任される。財産には、現預金、不動産、自動車、貸金、保険の解約返戻金、受給予定の退職金などが含まれる。

自己破産の手続きに必要な書類

破産手続きの申し立てには下記の書類などが必要となる。

【共通】

  • 破産手続開始・免責許可申立書
  • 陳述書
  • 債権者一覧表
  • 財産目録
  • 住民票の写し
  • 所得証明書または給与明細書
  • 預貯金通帳の写し

【各条件に該当する場合のみ】

  • 賃貸借契約書の写し
  • 保険証券の写しおよび解約返戻金額証明書
  • 退職金見込額証明書
  • 不動産登記簿謄本および固定資産評価証明書
  • 被担保債権残額を証する書面
  • 不動産を処分した際の契約書など
  • 車検証写し
  • 自動車の査定書
  • 有価証券の写し
  • 生活保護受給証明書
  • 公的年金受給証明書
  • 失業保険受給証明書
  • 商業登記簿謄本
  • 確定申告書、決算書および事業者用追加陳述書

申立人はさまざまな情報を提出する。裁判所によって提出書類の確認が行われ、申立人が債務を支払う資力がないと判断された場合、破産手続開始決定が出される。

破産法の改正前に使われた言葉である破産宣告に該当し、この時点から申立人は債務者から破産者となる。

自己破産に関する手続きのパターン

破産手続開始決定後に、破産手続きが進められる。状況によって手続きの流れが変わるので、あらかじめ知っておくとよい。

パターン1.管財型

裁判所が選任した破産管財人が、提出された財産目録をもとに破産者の財産状況を調査する。その後、財産を換価・処分・回収したうえで債権者に分配する。分配するお金がなくなった時点で破産手続きは終了となる。

パターン2.同時廃止型

破産者に預貯金や換金できる財産がない場合、手続きの流れが異なる。破産管財人は選任されずに、破産手続開始決定と同時に破産手続廃止決定が行われ、免責手続きに進む。

ただし、債務の原因が浪費やギャンブルなどである場合には管財型とされるケースがある。

免責手続きとは?

破産手続きでは破産者の財産が債権者に分配されるが、免責手続きでは破産者の債務について法律上の支払義務を免除する。免責手続きは破産者の経済的再建を援助する仕組みといえよう。

破産手続きの終了後に債務の免責が決定するが、許可されない場合もある。主な免責不許可事由は以下の通りだ。

  • ギャンブルや浪費が債務の主な原因である
  • 財産を隠していた
  • 裁判所や破産管財人の調査に協力しなかった
  • 過去7年以内に免責を受けている

免責手続きでは、破産管財人の意見を参考に裁判所が免責許可を下す。免責許可決定が行われると破産者ではなくなり、課される資格制限が消滅する。

自己破産のメリット・デメリット

自己破産の代表的なメリット・デメリットをそれぞれ3つお伝えする。

自己破産のメリット3つ

メリット1.債務の返済義務がなくなる

免責許可が決まれば、元本・利息を含めて破産前に抱えていた債務の返済義務が法的に免除され、金銭的負担が減る。破産後の生活を再建しやすくなるだろう。

メリット2.債権者との関係を断ち切れる

債務の返済が滞っている場合には督促や取り立てに追われる。場合によっては債権者による強制執行が行われ、金銭的・精神的に負担がかかる。

弁護士を通じて破産手続きを申し立てる旨を通知すれば、本人が債権者に対応しなくて済む。さらに自己破産後は債権者との関係を断ち切ることができ、精神的負担も減らせる。

メリット3.最低限の生活を維持できる

破産手続きでは、全ての財産を失うわけではない。生活必需品を手元に残すことができ、最低限の生活を維持できる。

自己破産のデメリット3つ

デメリット1.財産を処分される

不動産や車などの価値が高い資産については、破産管財人によって換金され、債権者に分配される。最低限必要なもの以外は全て処分されてしまうと考えて良い。

デメリット2.一定期間借り入れできない

自己破産の事実は信用情報機関に登録されるため、銀行・カード会社・消費者金融などから一定期間借り入れできなくなる。

同様に、クレジットカードや住宅ローンの審査も一定期間通らない。つまり、借り入れに依存しない生活を強いられるのだ。

デメリット3.一定期間職業制限がある

破産すると一定期間職業を制限される。弁護士・司法書士・証券外務員・生命保険募集人・警備員などが該当し、免責許可決定後まで働けない場合がある。

自己破産における年金や財産の扱い

破産手続きによって財産を処分されるが、公的年金の受給に影響はあるのか。破産手続きで手元に残る財産、免責許可決定後に得た財産の扱いなどについてお伝えする。

公的年金の受給権

自己破産によって、将来の公的年金に関する受給権が消滅することはない。年金の受給権は譲渡・担保・差し押さえできないとされている。既に年金を受け取っている場合も受給権を失わない。

ただし、自己破産前に受け取った年金は現預金であるため、処分の対象となりえる。

なお、公的年金に上乗せする制度である確定拠出年金・確定給付年金・厚生年金基金についても、差し押さえの対象外で受給権に影響はない。

破産手続き時に残る財産

各地方裁判所によって異なるが、原則として換金価値が20万円以上の財産が1つ以上ある場合、管財型の手続きにもとづき財産が処分される。

ただし、生活必需品などの差押禁止動産や、99万円以下の現金は手元に残せる。裁判所に申し立てすれば、手元に残す財産の範囲を拡張することも可能だ。

免責許可決定後に得た財産

免責許可決定後に得た勤労収入による金銭や財産などは、処分・差押の対象とはならない。債務を清算した後に築いた財産は自身が所有する。ただし、自己破産前に税金や社会保険料を滞納していた場合、その支払い義務は残るので注意したい。

自己破産の前に検討したい方法

財産を処分されない債務整理の方法もあり、自己破産の前に検討するとよい。

方法1.民事再生手続(個人再生)

将来の収入を考慮して返済計画を立てる手続きであり、裁判所に申し立てる。債権者の同意と裁判所の承認にもとづき返済計画が実行され、残りの債務が免除される。

原則として3年間で分割して返済する。返済総額は、破産手続きをした場合に債権者へ配当される額を上回らなければならない。自己破産のように債務がなくなることはないが、毎月の返済額や返済総額を軽減できる。

方法2.任意整理

弁護士や司法書士に金利の再計算を依頼し、返済負担を減らせるよう債務者と交渉してもらう方法だ。

内容は、支払利息や遅延損害金の免除をはじめ、過払い金があった場合の債務相殺などである。債務の額や内容によっては負担を軽減できるだろう。

自己破産について正しく理解

以上、自己破産について全体像をお伝えした。自己破産にマイナスイメージを抱く方もいるだろう。しかし、財産の全てが処分されるわけではなく、自己破産しても最低限の生活を維持できる。

生活を立て直して資産を築ければ、自己破産の前と同様に暮らすことも不可能ではない。自己破産について理解を深め、万が一のケースに備えておこう。(提供:THE OWNER

文・澤田朗(相続士、ファイナンシャル・プランナー)

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