「事業譲渡」と「会社分割」の5つの違いとは?メリット・デメリットと、正しい選び方を解説

「事業譲渡」と「会社分割」の5つの違いとは?メリット・デメリットと、正しい選び方を解説

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事業譲渡と会社分割は、数あるM&Aの手法の中でも混同されやすい。いずれも似た手法ではあるが、細かく見ればさまざまな違いがあるため要注意だ。目的に適した手法を選べるように、M&Aを検討している経営者は、しっかりと正しい知識を身につけていこう。

事業譲渡とは?

事業譲渡,会社分割

(画像=PIXTA)

事業譲渡とは、会社で取り組んでいる事業をひとつずつに切り分けて、事業の一部またはすべてを他社に売却すること。売却側は事業を失う代わりに対価(売却益)が発生し、買収側は対価と引き換えに新しい事業を得ることになる。

この事業譲渡は、M&Aの中では株式譲渡に次いでよく用いられる手法だ。ただし、実施する目的はケースごとにやや異なり、以下のように会社の立場によっても目的が変わってくる。

立場 事業譲渡の主な目的
売り手側 ・会社のスリム化
・利益が出ていない事業など、ノンコア事業の切り離し
・多額の資金の獲得(売却益) など
買い手側 ・事業規模の拡大
・新規事業の取得
・新たな人材や技術の確保 など

なお、当事者の間で特に合意がない場合は、売り手側には「20年間の競業避止義務」が課せられる。つまり、同一エリアで売却した事業と同じビジネスには取り組めなくなるため、売却側に立つ中小企業は注意しておきたい。

会社分割とは?

会社分割も、上記で解説した事業譲渡と似た形の手法だ。会社分割では事業に関する「権利・義務」を分割し、対価を得る代わりに事業の権利・義務を他社へ移転させる。

会社分割は主に「グループ内再編」を目的として実施されるが、目的によって実施される形がやや異なる。そのため、事業の移転先や対価の支払い先によって、大きく以下の4つの種類にわけられている。

事業の移転先 対価の支払い先 会社分割の種類
新設会社 分割会社の株主 【1】新設分割型分割
分割会社 【2】新設分社型分割
既存会社 分割会社の株主 【3】吸収分割型分割
分割会社 【4】吸収分社型分割

事業の移転先として新設会社をつくる【1】・【2】は、まとめて「新設分割」と呼ばれることもある。また、既存会社に事業を移転する【3】・【4】についても、「吸収分割」とまとめて呼称されるケースがあるため、これを機にしっかりと覚えておこう。

事業譲渡と会社分割の違い!特に押さえておきたい5つのポイント

ここまでを読んだだけでは、事業譲渡と会社分割の違いはわかりづらいかもしれない。しかし、実は両者にはさまざまな違いがあるため、その違いを理解したうえで目的に適した手法を選ぶことが重要だ。

そこでまずは、特に押さえておきたい5つの違いを以下で確認していこう。

1.買収対価の内容

資産や事業の売買が目的である事業譲渡では、基本的に買収対価が「現金」で支払われる。それに対して、組織再編を目的とする会社分割では、対価として「株式」が支払われるケースも珍しくない。

買い手側の立場からは、買収対価は現金ではなく株式で支払ったほうが、負担するコストを抑えられるメリットがある。ただし、会社分割であっても売り手側から現金が求められるケースは十分に考えられるので、買い手側は柔軟に対応する必要がある。

ちなみに、いずれの手法も買収対価に関する規律は特に定められていないため、仮にお互いが合意をすれば、株式の支払いによって事業譲渡を進めることも可能だ。

2.発生する税金

事業譲渡は「売買」にあたるため、原則として売り手側・買い手側の双方に消費税が課せられる。それに対して、会社分割では消費税が非課税となるうえに、登録免許税や不動産取得税の軽減措置(買い手側)も受けられる。

つまり、税金面においては会社分割のメリットは非常に大きい。2019年10月からは消費税が8%から10%に引き上げられているため、税金面でのメリットの差はさらに広がっている。

3.資産・負債の引き継がれ方

事業譲渡では、譲渡の対象となる資産・負債を個別に指定できる。つまり、簿外債務などの不要資産を除外した形で譲渡を進められるので、買い手側はリスクを抑えた形で事業を引き受けることが可能だ。

一方で、会社分割は権利・義務を「包括的に承継する形」となる。対象事業をそのまま引き受けることになるため、未払い給与や売掛金など、買い手側は想定外の簿外債務に注意しなければならない。

4.契約や許認可の引き継がれ方

事業譲渡では契約・許認可も個別継承となるので、たとえば売掛金をはじめとした債権や債務、従業員との契約などに関して、個別に同意を得なければならない。さらに、事業にかかわる許認可は引き継がれず、再取得をする必要がある。

それに対して会社分割では、一部のものを除いて契約・許認可が自動的に引き継がれる。つまり、債権者や従業員に同意を得る作業、許認可を取りなおす作業などが不要となるため、手続きの手間を大きく抑えられるのだ。

ただし、会社分割では相手方の同意は不要なものの、債権者の利益を守る「債権者保護」は必要となるので注意しておこう。

5.株主総会特別決議の必要性

会社分割はどのような方法で実施する場合であっても、株主総会による特別決議が必要になる。その一方で、事業譲渡では以下のように条件が定められており、ケースによっては特別決議なしで譲渡を進めることが可能だ。

特別決議が必要になるケース(売り手) 特別決議が必要になるケース(買い手)
・事業のすべてを譲渡する場合
・総資産額の5分の1を超える資産を譲渡する場合
・売り手側から、事業のすべてを譲り受ける場合

また、会社分割では契約・計画に関する書面を、本店に備置きする義務が課せられるが、事業譲渡ではその必要がない点も合わせて覚えておきたい。

事業譲渡と会社分割には、ほかにもさまざまな違いがある。以下は、ここまで紹介した内容も含めて、両者の違いをまとめたものだ。

主な違い 事業譲渡 会社分割
行為の種別 取引行為(売買) 会社法における組織再編行為
買収対価 現金が多い 株式が多い
消費税 発生する 発生しない
税金の優遇制度 なし 不動産取得税、登録免許税については、軽減措置を受けられる可能性がある
権利・義務の引き継がれ方 個別承継 包括承継
簿外債務の引き継ぎリスク 基本的にはない あり
契約の引き継がれ方 債権や債務、従業員に対して、個別に同意を得る必要がある 自動的に承継されるため、個別に同意を得る必要はない
債権者保護 必要なし 必要あり
許認可 再取得が必要 一部を除いて、再取得の必要がない
株主総会特別決議の必要性 ケースによる あり

事業譲渡と会社分割は似た手法だが、上記のようにさまざまな違いがある。それぞれ、有利なシーンと不利なシーンが変わってくるため、M&Aなどの必要性に迫られたときには、目的に適したほうをしっかりと選びたい。

事業譲渡と会社分割のメリット・デメリットを徹底比較

事業譲渡や会社分割を検討しているのであれば、両者のメリット・デメリットを理解しておくことが重要だ。以下では、ここまで解説しきれなかった内容も含めて、事業譲渡と会社分割のメリット・デメリットをまとめた。

○買い手側の主なメリット・デメリット

メリット デメリット
事業譲渡 ・必要な事業のみを買収できる
・有形資産だけではなく、人材やノウハウなどの無形資産も選択できる
・簿外債務の引き継ぎリスクを抑えられる
・事業のすべてを譲り受けるケースを除いて、株主総会特別決議の必要がない
・現金での買取資金が必要になる
・消費税が発生するなど、税金面での優遇が適用されない
・売り手側の優秀な従業員が流出する恐れがある
・全体的に手続きに手間がかかる
会社分割 ・ケースによっては現金が必要ない
・税金面での優遇を受けられる
・従業員を流出させずに、事業を承継できる
・事業譲渡に比べると、手続きが簡易
・税金面での優遇を受けるためには、多少の専門知識が必要になる
・簿外債務をはじめ、不要な資産なども引き継がなくてはならない
・株主総会特別決議が必要になる

○売り手側の主なメリット・デメリット

メリット デメリット
事業譲渡 ・売却益として現金が手に入る
・ノンコア事業を売却することで、「事業の選択と集中」を実現できる
・ケースによっては、株主総会特別決議が必要ない
・消費税が発生するなど、税金面での優遇が適用されない
・債権者との個別の手続きが必要ない・競業避止義務が課せられる
会社分割 ・消費税が発生しない
・債権者との個別の手続きが必要になる
・株式を現金化することが難しいケースがある
・自社に残したい契約なども、すべて承継の対象になってしまう
・株主総会特別決議が必要になる

上記のデメリットの中には、深刻なリスクになり得る点もいくつか潜んでいる。たとえば、事業譲渡において優秀な人材が流出すると、事業のノウハウや技術も失われるので、買い手にとっては大きなダメージにつながる可能性があるだろう。

ほかにも気を付けたいリスクは存在するため、特に上記の「デメリット」は内容をしっかりと理解して、自社のケースに当てはめたうえで検討を進めることが重要だ。

結局、事業譲渡と会社分割はどちらを選ぶべき?

ここまでの話をまとめると、事業譲渡と会社分割のどちらを選ぶべきなのかは、以下のように売り手・買い手の目的によってわけられる。

○事業譲渡が望ましい主なケース
・売り手が対価として現金を求めている
・買い手がリスクを抑えた形での買収を望んでいる
・売り手と買い手の双方が、特定の事業に力を入れたいと考えている など
○会社分割が望ましい主なケース
・競業避止義務が課せられない形で、事業を売却したいと考えている
・買い手が少しでも買収コスト(現金)を抑えたいと考えている
・売り手と買い手の双方が、事業をまとめてスムーズに承継したいと考えている など

ただし、実際には法律や税務が複雑に関係してくるため、安易にどちらの手法を選ぶべきではない。特に専門知識が求められるようなケースでは、無理をせずに専門家に相談をすることが大切だ。

専門家の力も借りながら、目的に適した選択肢を

事業譲渡と会社分割は、いずれも事業を他社へ移転させる手法だ。しかし、本記事で詳しく解説してきたように、両者には法律や税制、手続きなどの違いがある。

事業を買収・売却する目的によって適した手法は変わってくるため、この二者択一を安易に決めるべきではない。メリット・デメリットをしっかりと見比べて、必要があれば専門家に相談することも検討しながら、目的に適したほうを選ぶようにしよう。(提供:THE OWNER

文・THE OWNER編集部

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