社会保険の加入条件は?適用事業所・加入対象者や手続き方法のまとめ

社会保険の加入条件は?適用事業所・加入対象者や手続き方法のまとめ

あわせて読みたい

澤田 朗
澤田 朗(さわだ・あきら)
日本相続士協会理事・相続士・AFP。1971年生まれ、東京都出身。日本相続士協会理事・相続士・AFP。相続対策のための生命保険コンサルティングや相続財産としての土地評価のための現況調査・測量等を通じて、クライアントの遺産分割対策・税対策等のアドバイスを専門家とチームを組んで行う。設計事務所勤務の経験を活かし土地評価のための図面作成も手掛ける。個人・法人顧客のコンサルティングを行うほか、セミナー講師・執筆等も行う実務家FPとして活動中。

日本では社会保険制度があり、労働者はさまざまな給付やサービスを受けられるため、法人や個人の事業所は、要件を満たせば社会保険への加入義務がある。今回は社会保険の種類や各制度の概要と共に、社会保険の適用事業所・加入対象者となる要件や加入手続きについてお伝えする。

社会保険の種類は?日本の社会保険制度

社会保険

(画像=PIXTA)

社会保険は、加入者が傷病・労働災害・退職・失業などのさまざまなリスクに備えて保険料を支払い、実際にリスクに遭った人に対して給付金やサービスなどを支給するための保険である。社会保険制度は法律等によって労働者に加入が義務付けられており、給付や保険料の負担額なども定められている。

社会保険には、以下の5つがあり、これらの制度を合わせて、一般的に「広義の社会保険」と呼ばれている。

1.医療保険 (健康保険):病気・ケガの際に給付を受けられる
2.介護保険:加齢等に伴い介護が必要になった際に給付を受けられる
3.厚生年金保険:老齢(高齢により働けなくなった時)・障害・死亡時に給付を受けられる
4.労災保険 :業務上の病気・けがや失業時等に給付を受けられる
5.雇用保険:失業時(退職・解雇)に失業手当として給付を受けられる

給付金やサービスに当てられる社会保険の財源は、事業主や加入者(被保険者)が支払う保険料が主となる。また、一部は国や地方自治体も負担している他、低所得者の保険料を軽減・免除するための費用の一部も国・地方自治体が負担している。

健康保険や介護保険には、給付を受ける被保険者本人が治療費などの一部を支払う「一部負担金」の制度もある。

それぞれの社会保険について、制度の詳細を説明する。

医療保険(健康保険)

医療保険には「国民健康保険」「全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)」「組合管掌健康保険」「共済組合」「後期高齢者医療制度」など様々な制度があり、国民全ての人が何らかの制度に加入しなければならず(国民皆保険)、医療機関で医療サービスを受けることができる。

医療費の自己負担割合は年齢や所得等によって異なり、69歳までの現役世代や現役並みの所得がある70歳以上の高齢者は、3割負担となっている。中小企業の事業所は「協会けんぽ」に加入することとなり、保険料は加入者の報酬(標準報酬月額)によって定められた健康保険料を、労使との折半で支払うことになる。

介護保険

介護保険は、地方自治体(市区町村)が運営者(保険者)となり、その自治体に住む加入者(被保険者)の年齢によって、以下のように分けた上で、保険の加入と保険料納付が義務付けられている。

・第1号被保険者:65歳以上が
・第2号被保険者:40歳以上65歳未満

要介護認定されることで介護サービスを受けられるが、被保険者の年齢によって受給要件が異なる。

・第1号被保険者:「要介護・要支援状態」となればその状態になった理由を問われない
・第2号被保険者:加齢に起因する疾病(特定疾病)による要介護・要支援状態の場合に限定される

協会けんぽの加入者は健康保険料と合わせて、一定料率の介護保険料を労使との折半で支払うことになる。

年金保険

公的年金制度は大きく2つに分けられる。

「国民年金」は、20歳以上60歳未満の日本国内居住者が加入し、「老齢・障害・死亡」時に「基礎年金」の給付を受けることができる。「厚生年金」は、厚生年金保険の適用を受ける会社に勤務する全ての人と公務員が加入し、基礎年金に加えて厚生年金分の保険給付を受けることができる。

中小企業の事業所は厚生年金に加入することとなり、加入者の報酬(標準報酬月額)によって定められた厚生年金保険料を労使との折半で支払うことになる。

労災保険

労災保険は「労働者災害補償保険法」に準じて、労働者が仕事中に業務起因で発生した災害(業務災害)や通勤途上の災害(通勤災害)にあった場合に、その労働者や遺族に対して医療費などの所定の保険給付を行う制度である。

労働基準法上では、労働者が業務上負傷したり罹患した場合には、事業主が療養補償や休業補償等の実施をしなければならない。事業主が災害補償責任を果たすことを支援する制度であるため、保険料は全額事業主負担となっている。

雇用保険

雇用保険は、労働者が失業したり、雇用の継続が困難になった場合に、所定の職業教育訓練を受けた場合等に、生活の安定や就職の支援を目的として給付を行う制度となる。

代表的な給付には「基本手当」があり、労働者が定年に達したり会社の倒産や契約満了により離職した場合に、失業中の金銭的な不安を軽減して再就職を促進するために、一定期間所定の金額が支給される。保険料は労使との折半の部分と事業主のみが負担する部分があり、それぞれ保険料率が定められている。

このように事業所・労働者が保険料を納めることにより、所定の要件に該当した場合には給付を受けることができるのが日本の5つの社会保険制度となる。

どのような会社が適用事業所となる?

社会保険

(画像=PIXTA)

5つの社会保険制度には、どのような会社が加入しなければならないのだろうか。それぞれの制度に加入する必要がある「適用事業所」の内容についてお伝えする。

医療保険・年金保険・介護保険の適用事業所

健康保険と厚生年金保険では、下記2つの内いずれかに該当する事業所を「強制適用事業所」とし、法律による加入義務がある。

1.法人事業所で常時従業員(事業主のみの場合を含む)を使用する事業所、国・地方公共団体の事業所
2.常時従業員を5人以上雇用している、下記の16業種の個人事業所

※16業種
製造業、鉱業、電気ガス業、運送業、貨物積卸し業、物品販売業、金融保険業、保管賃貸業、媒体斡旋業、集金案内広告業、清掃業、土木建築業、教育研究調査業、医療事業、通信報道業、社会福祉事業

法人であれば健康保険や厚生年金保険への加入が義務付けられており、個人事業であっても上記の業種で5人以上雇用している場合には加入しなければならない。

上記の業種に該当している個人事業であっても、従業員が5人未満であれば加入の義務はない。また、5人以上雇用していても「サービス業の一部(クリーニング業・飲食店・ビル清掃業等)・農林業・水産業、畜産業・法務等」の事業所は強制適用事業所とはならない。

一方で、強制適用の対象とならない事業所であっても「任意適用事業所」として健康保険・厚生年金保険に加入することができる。

また、事業所所属者の半数以上の同意を得て、事業主の申請によって厚生労働大臣に適用事業所の認可を受けることもできる。

なお適用事業所と認定されて健康保険に加入した場合には、40歳以上の被保険者が在籍していれば健康保険の保険料と合わせて介護保険の保険料も納付しなければならない。

労災保険の適用事業所

労災保険は、原則として一人でも労働者を使用していれば、全ての事業が適用対象となる。なお労災保険における労働者は、正社員・アルバイト・パートタイマーの雇用形態の区別は無く、全員加入が必須である。事業主が労働者の療養補償や休業補償等を行うための制度であるため、保険料は全額事業主負担となる。

労災保険は労働者が加入する保険であり、事業主は加入できない。そのため、中小事業主やその他の自営業者などが加入できる「特別加入制度」が設けられている。労災保険に加入できる「中小事業主等」「一人親方その他自営業者」の要件は下記の通りである。

【中小事業主等】

  1. 下表に定める数の労働者を常時使用する事業主(事業主が法人その他の団体である時はその代表者)
  2. 労働者以外で1の事業主の事業に従事する人(事業主の家族従事者等)
業種 労働者数
金融業
保険業
不動産業
小売業
50人以下
卸売業
サービス業
100人以下
上記以外の業種 300人以下

※労働者を常時雇用しない場合でも、年間100日以上労働者を使用している場合には、常時労働者を使用しているものとして特別加入が可能。

【一人親方その他自営業者】
1.自動車を使用して行う旅客または貨物の運送の事業(個人タクシー業者や個人貨物運送業者等)
2.土木、建築その他の工作物の建設、改造、保存、原状回復、修理、変更、破壊、解体又はその準備の事業(大工、左官、とび職人など)
3.漁船による水産動植物の採捕の事業
4.林業の事業
5.医薬品の配置販売(医薬品医療機器等法第30条の許可を受けて行う医薬品の配置販売業)の事業
6.再生利用の目的となる廃棄物などの収集、運搬、選別、解体等の事業
7.船員法第1条に規定する船員が行う事業

労働者を雇用していても、使用する合計日数が年間100日未満であれば、一人親方等として特別加入ができる。

雇用保険の適用事業所

雇用保険も労災保険と同様に、労働者を雇用する場合は業種や事業の規模を問わず、農林水産業の一部を除いてすべて適用事業となる。

労災保険と異なり、アルバイトやパートタイマーで所定の労働時間未満や雇用期間未満の労働者など、雇用形態などによっては雇用保険の適用除外となることがある。また、雇用保険の保険料のうち折半部分は労働者が負担しなければならない。

社会保険の加入対象者はだれ?

社会保険

(画像=PIXTA)

事業を行う上で労働者を雇った場合には、要件を満たした事業者は社会保険に加入しなければならないことが分かっていただけただろう。

ただし、労働者についても社会保険の加入対象(被保険者)となる場合とならない場合がある。ここでは、どのような労働者が社会保険に加入できるのかを説明する。

医療保険・年金保険・介護保険の加入対象者

健康保険や厚生年金保険の被保険者となる加入対象は下記の通りである。

1. 正社員・法人の代表者・役員
2. パートタイマー・アルバイト等の短時間労働者で、週の所定労働時間及び月の所定労働日数が同じ事業所で同様の業務に従事している一般社員の3/4以上である場合
3. 短時間労働者で、所定労働時間及び所定労働日数が一般社員の3/4未満であっても、下記の要件を全て満たす場合
a.週の所定労働時間が20時間以上(残業時間は含めない)
b.雇用期間が1年以上見込まれる(雇用期間が1年未満の場合にも、雇用契約書等でその契約が更新される場合がある旨が記載されている場合等も含む)
c.賃金の月額が8.8万円以上(賞与・残業代・通勤手当等は含めない)
d.学生でない(夜間・通信・定時制の学生は対象となる)
e.厚生年金保険の被保険者数が常時501人以上の法人・個人の適用事業所に勤めている

※厚生年金保険の被保険者数が501人未満の法人・個人の適用事業所であっても、労使合意に基づき申出をした場合は任意特定適用事業所となる。

また、健康保険や厚生年金保険の被保険者とならない条件は下記の通りである。

・日々雇い入れられる人:1か月を超えて引き続き使用されるようになった場合は、その日から被保険者となる。
・2か月以内の期間を定めて使用される人:所定の期間を超えて引き続き使用されるようになった場合は、その日から被保険者となる。
・所在地が一定しない事業所に使用される人:いかなる場合も被保険者とならない。
・季節的業務(4か月以内)に使用される人:継続して4か月を超える予定で使用される場合は、当初から被保険者となる。
・臨時的事業の事業所(6か月以内)に使用される人:継続して6か月を超える予定で使用される場合は、当初から被保険者となる。

雇用保険・労災保険の加入対象者

雇用保険の適用事業所で雇われている労働者は雇用保険に加入できるが、雇用関係によって収入を得る労働者が対象となるため、いわゆる「臨時内職的」に働く場合には加入することはできない。ただし、短期間労働者については、下記の要件の両方に該当すれば雇用保険に加入できる。

1.31日以上引き続き雇用されることが見込まれる。具体的には次のいずれかに該当する場合。
a.期間の定めがなく雇用される場合
b.雇用期間が31日以上である場合
c.雇用契約に更新規定があり31日未満での雇止めの明示がない場合
d.雇用契約に更新規定はないが同様の雇用契約により雇用された労働者が31日以上雇用された実績がある場合
2.1週間の所定労働時間が 20 時間以上

労災保険については、上記の要件に関わらず全ての労働者が加入対象となり、保険料は事業主が全額負担することになる。

社会保険の加入手続き方法

事業所が社会保険に加入する場合や、事業所で雇用する労働者が社会保険の被保険者となるには、所定の手続きが必要となる。それぞれの制度の加入手続きについて説明する。

健康保険・厚生年金保険の加入手続き方法

ここでは、健康保険や厚生年金保険への加入申請に必要な書類等を紹介する。

・健康保険・厚生年金保険新規適用届
保険加入の要件を満たしてから5日以内に、事業所の所在地を管轄する年金事務所に提出する。法人の場合は「法人(商業)登記簿謄本(原本)」、強制適用となる個人事業所の場合は事業主の世帯全員の「住民票(原本)」を合わせて提出する。

・被保険者資格取得届
従業員を採用した際など、健康保険・厚生年金保険に加入すべき人が新しく生じた時に、5日以内に提出する。

・被扶養者(異動)届(国民年金第3号被保険者関係届)
被保険者となった人に扶養家族がいる場合や、被扶養者を追加や削除したり氏名の変更が必要な場合、5日以内に提出する。

・保険料口座振替納付(変更)申出書
事業主が、健康保険料や厚生年金保険料の口座振替を希望する場合や、口座振替を行っている口座を変更したい場合に提出する。

労災保険・雇用保険の加入手続き方法

・保険関係成立届、概算保険料申告書
労働保険(労災保険・雇用保険)の適用事業となった場合には、労働保険の「保険関係成立届」を、所轄の労働基準監督署や公共職業安定所に提出する。その後、その年度分の労働保険料を概算保険料として申告・納付することになる。

・雇用保険適用事業所設置届、雇用保険被保険者資格取得届
雇用保険が適用されると認定された場合、上記書類に加えて「雇用保険適用事業所設置届」および「雇用保険被保険者資格取得届」を所轄の公共職業安定所に提出する必要がある。

【一元適用事業の場合】
一元適用事業とは、労災保険と雇用保険の保険料の申告や納付などを、まとめて行う事業のことであり、以下の書類の作成と提出をしなければならない。

必要書類 提出先
1 保険関係成立届
(保険関係が成立した日の翌日から10日以内)
所轄の労働基準監督署
2 概算保険料申告書
(保険関係が成立した日の翌日から50日以内)
所轄の労働基準監督署又は
所轄の都道府県労働局
3 雇用保険適用事業所設置届
(設置の日の翌日から10日以内)
所轄の公共職業安定所
4 雇用保険被保険者資格取得届
(資格取得の事実があった日の翌月10日まで)
所轄の公共職業安定所

※1の手続きを行った後又は同時に2の手続きを行う。
※1の手続きを行った後に3及び4の手続きを行う。

【二元適用事業の場合】
二元適用事業とは、その事業の内容上、労災保険と雇用保険をまとめることが困難で、個別に保険料の申告・納付等を行う事業のことである。

農林漁業や建設業などが二元適用事業に該当し、それ以外の事業が一元適用事業となることが一般的であり、以下の書類の申請が必要である。

  1. 労災保険に関する手続き
必要書類 提出先
1 保険関係成立届(保険関係が成立した日の翌日から10日以内) 所轄の労働基準監督署
2 概算保険料申告書(保険関係が成立した日の翌日から50日以内) 所轄の労働基準監督署又は所轄の都道府県労働局

※1の手続きを行った後又は同時に2の手続きを行う。

  1. 雇用保険に係る手続き
必要書類 提出先
1 保険関係成立届
(保険関係が成立した日の翌日から10日以内)
所轄の公共職業安定所
2 概算保険料申告書
(保険関係が成立した日の翌日から50日以内)
所轄の都道府県労働局
3 雇用保険適用事業所設置届
(設置の日の翌日から10日以内)
所轄の公共職業安定所
4 雇用保険被保険者資格取得届
(資格取得の事実があった日の翌月10日まで)
所轄の公共職業安定所

※1の手続きを行った後又は同時に2~4の手続きを行う。

今回お伝えしたように、社会保険には事業者・労働者共に加入要件があり、要件を満たした場合には加入が義務付けられている。社会保険制度は労働者(被保険者)やその家族を守る重要な制度であるため、事業所や労働者が要件に社会保険加入要件に該当する場合は、速やかに加入手続きを進めていただきたい。(提供:THE OWNER

文・澤田朗(フィナンシャルプランナー・相続士)

続きを見る(外部サイト)

zuu onlineカテゴリの最新記事